Media Do Tech Do Blog

株式会社メディアドゥのエンジニアによるブログです。

UXリサーチを企業に根付かせるためリサーチャーが心がけること

f:id:uxman:20190424111823j:plain

こんにちは、UXリサーチャーの吉永です。

メディアドゥにてUXリサーチをプロジェクトを横断して行なっています(今回は技術の話ではなくリサーチのお話になります)。

さて、弊社メディアドゥの事業に、グループ会社の運営するマンガサイトがあります。これからまだまだ伸ばしていこう、というステータスの事業で、最近こちらでUXリサーチを行うことになりました。

UXリサーチの潮流がすぐそこに来ている昨今、これからこういった「リサーチの実績が無いチームの1人目のリサーチャー」という立ち位置の方も増えることかと思います。

そういった方に向けて、現在自分が心がけていることと、最初に行ったリサーチについてお話しようと思います。

課題は「ユーザー理解」

実はメディアドゥには、6名のデザイナーから成り、様々な事業を横断するUXデザインチームが存在します。自分はその中にUXリサーチャーとしてジョインし、最初のプロジェクトに付きました。

それが先述のマンガサイトです。

自分はメディアドゥに1人目のUXリサーチャーとしてジョインしたばかりで、事業のことも社内のこともユーザーのことも何一つ充分な知識が無い状況でした。まずは情報収集から始めないといけません。

現状を把握するため、同マンガサイトのプロジェクトマネージャーに話を聞いてみると、彼らは今後のペルソナ策定や改善に使うデータとして、既にサービスを使っている人使っていない人それぞれの情報を知りたがっていました。

チームの持つ「感覚」を白紙に戻さない

ここで「今ある仮説はフワッとしているのでユーザーインタビューからやりましょう」と提案してもよかったのですが、それは行わず、アンケート調査と、アンケートを設計するための1つのワークショップを提案しました。

理由は2つあります。

1つ目は、彼らの中にはユーザー像やユーザーの課題感が、感覚的な仮説として存在するようだったから。それも、特定の誰かが持っているというよりは、上から下まで役職の異なる各ステークホルダーの中に点在するようでした。

メンバーが感じていることを知らない状況でユーザーインタビューから出発するよりも、今バラバラに散らばっている感覚的なユーザー仮説を明文化することを優先すべきです。

何故なら、触れている時間・考えている時間が長い人たちの感覚は一朝一夕では得られない重要な資産だからです。

また副作用として、明文化して揃えた情報を見た上でリサーチの方針転換も出来るので、「本当に行うべきはこのリサーチ方法じゃなかった」という事態を防ぐことも出来るからです。

2つ目は、メディアドゥにはまだ、UXリサーチに対して各チームに「慣れ」が存在しないから。より具体的には、定性的なデータの扱いについて不慣れで、定性データを定量データと同じように「集計」しようとしてしまいます。

こういったケースでは、ユーザーの声(≒定性データ)を含む定量データをまず扱う方がプロジェクトメンバーを混乱させません。

この点においてワークショップとアンケート調査を紐付けることは、メンバーが定性データと定量データを相互に参照・補完・依拠することになるので、良い「慣らし運転」になり得ます。

ワークショップを実施

自分が提案したワークショップは、メンタルモデルダイアグラムを作るワークショップでした。

メンタルモデルとは、人が過去の行動・体験から無意識に形成している物事への見方・考え方です。

通常メンタルモデルダイアグラムは観察で得られた定性データを用いて作りますが、今回は先に仮説としてのメンタルモデルダイアグラムを提案しました。

f:id:uxman:20190419185153p:plain
通常のアプローチでは、観察からメンタルモデルを見出す(画像出典

アンケート設計のためのワークショップ

実施したワークショップは、概要としては下記です。

  • 内容:(想像ベースで)メンタルモデルダイアグラムを作成するワークショップ
  • 目的:既存ユーザーが何故使ってくれているのか/非ユーザーが何故使ってくれていないのか、仮説を作ること

羽山芳樹さんのこちらのスライドに書かれている内容とほぼ同じで、違いはリサーチ対象の生の声を基にしていないことくらいです。

www.slideshare.net

ワークショップで行ったプロセスは下記です。

  1. ユーザーの行っている(と思う)タスクを抽出
  2. グルーピングしてインサイト化
  3. インサイトをグルーピングしてタワー化
  4. タワーをまとめてスペース化
  5. 各インサイトに対応する既存の機能・コンテンツの洗い出し
  6. 満たしている自信の無いインサイト・タワー・スペースの洗い出し

f:id:uxman:20190422135130p:plain
ワークショップの様子

ちなみに写真もデザインチームで用意しました。UXデザインチームはUXリサーチの社内啓蒙活動に取り組んでいます。

満たせているかどうか自信が無い10個のインサイトを発見

ワークショップの最後の工程によって、現在チームが想像しているユーザーの欲求を満たしているかどうか自信の無い10個の仮説を発見することができました。

f:id:uxman:20190422175019j:plain
ワークショップのアウトプット

そして「自信が無い = 検証すべき仮説である」として仮説検証用のアンケート設計へと移っていきます(アンケートの設計や調査・分析については後日別エントリーにまとめようと思います)。

メンタルモデルダイアグラムを使うかどうかは重要ではない

と、メンタルモデルダイアグラムについて上記に書きましたが、どんな手法を使うかはあまり重要ではありません。

本当に重要なのは、まずチームに点在する感覚を明文化するということです。そのために適しているなら、他の手法を使ってもよいでしょう(幸い、リサーチ手法もフレームワークもたくさんあります)。この段階で無理に「正しい」フローを追い求める必要はありません。

ユーザーの前にまずチームを理解する

UXリサーチというとその手法や正しさ、ユーザーとの対話やテストをイメージしがちです。もちろん手法は分かりやすい話題ですし、対話は最も大事なことです。

しかし、最も大事なことを効果的に行うには、視点(あるいは視座)をチームと同期しておかなければなりません。

視点が同期されていないリサーチはリサーチャーのエゴや手法のゴリ押しにすぎず、ただ一人浮足立っているだけです。それではリサーチ結果がプロジェクトに反映されることはありません。

リサーチ自体の遂行はもちろんのこと、プロダクトオーナーの話をよく聞いたり、リサーチの全体像をチーム全員が見れる場所で示すなど、チームに浸透させるアプローチを忘れてはいけません。

まとめ

  • チームにユーザー仮説が点在しており、かつ定性データへの慣れが存在しない状況だった
  • そのためワークショップとアンケート調査を提案した
  • 「慣れ」のないチームでのリサーチのファーストステップは、チームの中にある感覚・仮説を明文化すること
  • 今回はまとめるツールとしてメンタルモデルダイアグラムを使ったが、手法にこだわる必要は無い
  • ユーザーの前にまずチームを理解することがリサーチを効果的に進める近道

次回予告

次回のデザイン記事はアンケート設計・分析の話か、Figmaのお話になりそうです。お楽しみに。

──────

メディアドゥでは、引き続きUXリサーチャーを募集しています

マンガを扱う上場企業で、UXリサーチやりませんか? インタビュー等の定性調査もビッグデータ活用等の定量調査も、やりたいことがたくさんあります。

話を聞きたい方も一緒に働きたいも、業務委託希望の方も正社員希望の方も、奮ってご応募ください!

www.wantedly.com